
2019年3月8日(金)、梅原デザイン事務所 / 代表・デザイナーの梅原真氏をゲストにお迎えして、【土地の力を引き出すデザイン】をテーマにご講演いただきました。
森林面積が約84%と広大な高知県を中心に、デザインを用いて地域課題の解決に取り組む梅原氏。一次産業(農業・林業・漁業)以外の産業が乏しい高知県で、次々と大ヒット商品や全国から注目を集める企画を生み出すデザインの秘訣とはなにか?
会場に集まった興味津々の100人以上の参加者を前に、梅原氏から語っていただいたエピソードの一部をご紹介いたします。
・カツオの一本釣り漁師から「漁獲量も減り、魚価も低迷して困っている」と相談があった。アイデアを考えていたら、昔にばあさんがカツオを藁で焼いとったのを思い出したんや!そこで「漁師が釣って、漁師が焼いた」とキャッチコピーをつけて、藁で焼いたカツオを全国一律5500円で販売した。美味しいカツオが産地直送で届く。自分が食べるよりも人にプレゼントしたいと思うからバカバカ売れる。
・デザインはコミュニケーションを生み出すものや。ビジュアルも大事やけど、「言葉」が一番最初のコミュニケーション。その商品を一言で表す言葉はなんだ?それが「漁師が釣って、漁師が焼いた」だった。デザインで作ったのはこの2行です。そりゃ漁師が焼いたら美味しそうやん。
・中国産に押されて売上が下がっていた高知産の「しまんと栗」がありまして、なんとかせならんと。今までは「しまんと栗」だった商品名の間に「地」を入れたのが「しまんと地栗」です。ロゴは「地」を丸で囲ったシンプルなデザイン。そして日本人は「特選」が好きやから、その丸字の下に「特選」と入れたんです。お財布の紐が開くかどうかはここや。
・マイナスにプラスをかけ合わせるとマイナス。でもマイナスとマイナスをかけ合わせるとプラスになるんじゃないのか。カツオの一本釣りに大きなテクノロジーを入れるよりも、昔の価値をかけたらどうや?もういっぺんマイナスをかけへんか?そういう発想なんや。
・いろんな情報や意見をまとめながら、同じもの同士は集めて凝縮しながら、3つぐらいの塊になった時にデザインをする。そのタイミングで考え方を与えるのがデザインなんです。
・デザインとはコミュニケーションであるが、人の心を動かすことがどれだけ難しいか。泣かせることや怒らせることも一つの手段ではあるけれど、笑いが根っこにあればじわーんと広がるんじゃないですか。「しまんと地栗」は「スタジオジブリ」(と響きが似ている)。そんな構図をいつも考えて仕事しています。
講演会の中ではそのほかたくさんのエピソードをお話いただきましたが、「土地の力を引き出すデザイン」とはなにか?梅原氏の数々のエピソードにたくさんのヒントが隠されていました。
参加者の皆さまには今回の学びをご自身のフィールドに持ち帰っていただき、まずはプラスもマイナスも含めて、足元の事象をすべて地域資源だと捉えるところから。柔軟な発想の転換が「土地の力を引き出すデザイン」に繋がっていくはずです。
ご講演をいただきました梅原真さん、また全国各地からご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました!
最後に、本講演会を運営いたしました【NPOメイド・イン・ジャパンプロジェクト】は、「日本のモノづくり」の継承のため、生産者・デザイナー・ショップ・一般消費者を全国規模でつなぐ、2006年に発足したコミュニティです。
ご興味がある方は下記の連絡先までお問い合わせください。
info@madeinjapanproject.org
【土地の力を引き出すデザイン】梅原デザイン事務所代表 梅原真氏【伝統産業セミナー】
主催:名古屋伝統産業協会
運営:NPOメイド・イン・ジャパンプロジェクト